死を受け入れる④ 19歳と7カ月の『大往生』
若い頃のタローは、1日朝晩2回の散歩さえしっかり付き合ってあげれば、ほとんど手のかからないワンコでした。
けれども腎不全を発症してから、つまり彼が16歳ごろからは、世話を焼く度合いが徐々に高くなっていった気がします。
無理もありません。小型犬種のパグ犬で16歳と言えば、人間なら80歳*1の立派なお爺さんですから。
定期的に動物病院へ通ったり、食事量や水分摂取量、排尿回数など、彼の健康状態に気を遣うようになりました。
やがて、認知症で夜中に遠吠えをする老犬の話が他人事とは思えない、そんな日々が我が家にも訪れました。
夜中のタロー爺さんのお世話を担当してくれたのは、もっぱら連れ合いです。仕事の都合で朝6時前に家を出るため、早めに就寝するのですが……。タロー爺さん、夜更けも2時間おきぐらいの間隔で、吠えて起こすのが常になりました。
多くは排尿でしたが、たださすって欲しいだけのときもあったそうです。一晩に2、3回起こされたと言います。
その様子を獣医さんに話すと、連れ合いの体調を心配して「タロー君に薬を出しましょうか?」と提案してくれました。
帰宅後、連れ合いに相談したら、「薬はいいよ。何年も続くわけじゃないし……。吠えて知らせるんだから、タローはたいしたもんだよ」。
高齢犬の体への負担を考え、なるべく投薬の種類は増やしたくなかったのでしょう。
タローの死を伝えに動物病院を訪ねると、先生は私の話に耳を傾けた後、気遣いの言葉をかけてくださいました。「19歳と7ヵ月か……。大往生ですね。よく面倒を見られましたよ。ご主人にもよろしくお伝えください」。恐縮です。
当時を思い出しては、今も連れ合いはつぶやきます。「夜中に2回も3回も起きたんだぞ。なんか俺って偉くない? タローはきっと俺に感謝してるなー」。