パグ犬 タローが教えてくれたこと

生命の危機を何度か乗り越え、快食・快便、20歳に向け順調な日々を送っていたパグ犬タロー。それが、たった一日食べなくなって……。愛犬との日々を振り返りながら、老犬との暮らし、介護のヒントにもなればと考えています。

長生きの秘訣⑤散歩編2 キーワードはストレスフリー

散歩の主導権

散歩の主導権はタローに明け渡しました

散歩のルートや時間は、用事があるときはハル婆やに付き合ってもらうものの、基本的にタローが決めていました。

「えーっ、そんな癖をつけたら、言うことをきかなくならない?」

と犬友に言われたりしましたが、心配は無用です。

こちらに用事がある場合、
たとえば早く切り上げたいときや散歩のついでに郵便局へ寄りたいときなど、ひたすら彼に「今日は言うことをきいてください!」とお願いするのです。

最初こそ少し抵抗するものの、比較的素直にルート変更や時間短縮を受け入れてくれました。
その代わり用事がないときは彼が行きたいルートで、彼が満足するまで付き合う。

こうしてタローとの間に、信頼関係が生まれたように思います。

本能の赴くままに

本能の赴くまま風を感じ、様々なにおいに五感を刺激されて

ペットにとって、散歩は日差しや風を受け、草や地面、仲間の匂いを嗅いで、犬の本能が呼び戻される貴重な機会という説を目にしたことがあります。
とすれば、たとえ都会暮らしでも、なるべく彼が本能の赴くままに行動できる状況にしてあげたい。

タローの長寿に散歩が寄与したとすれば、それはストレスの少ない散歩だったからではないでしょうか。

彼の散歩コースは自宅を中心に東西南北に張り巡らされ、散歩はあたかもパトロールみたいな感がありました。
とんでもないところで知り合いの方にお会いすると、「あらタローちゃん、こんなところまで散歩に来るんだ!!」。驚かれたり、呆れられたり……。

あちらこちらに出没することで有名でした。

 

匂いフェチ
しつこく匂いをかぐ
匂いフェチの本領がいかんなく発揮される散歩の時間


もう一つ彼の散歩で思い出すのは、「お前は匂いフェチか?!」とツッコミを入れたくなるくらい、匂いに執着したことです。

たとえば電信柱や植え込みで気になる匂いがあると足を止め、クンクン嗅ぎ始めます。左側から嗅いだら、次は右側からと角度を変えて念入りに嗅ぐ。
時にはペロッと舐めて味見も。
一周回って再び嗅ぎ出すこともあり、5分くらい経過するなんてざらでしたし、通行人や掃除中の人に顰蹙を買うことも多々ありました。

主に仲間の尿跡を嗅いでいるのですが、尿の匂いには性別や年齢など、様々な情報が詰まっているそうです。
つまり、それを嗅いだり舐めることによって、タローは情報収集していたわけですね。

彼の縦横な散歩が何となくパトロールのようだと感じたのは、あながち間違っていませんでした。

そして嗅いだ場所には必ずマーキングする。

それは当然でしょう。本能的な行為ですから。
散歩しながら「おっ、あいつが今さっき通ったな」「うひょー、大好きな●●ちゃんが近くにいるかもしれない」など、タローの頭はフル回転していたにちがいありません。

飼い主さんが自転車に乗って、ワンコを走らせている光景を時々見かけます。脇目も振らず一生懸命に飼い主さんの自転車を追いかけるワンコ。

「スゴイな~!」と思う反面、「はたして楽しいのか?」と感じるのも事実です。

走力のトレーニングとしてはいいのかもしれませんが、途中で気になる匂いがあっても嗅ぐのを我慢するわけですよね。

同様に、散歩でワンコが匂いを嗅ぎたくて止まると、ご主人がリードを強く引っ張って歩みを止めさせない、いわゆる”躾”にも、ハル婆やはなんとなく引っかかるものがあります。


タロー15歳と7カ月 まだまだ元気に散歩していましたが…… この2カ月後には「慢性腎不全」と診断されました

好きなCM、??なCM 。

3匹のゴールデンレトリーバー

友人宅の"かしこカワイイ"ゴールデンレトリーバー・トリオ

最近、犬が出演するCMでお気に入りがあります。
モフモフの白い大型犬(犬種はグレートピレニーズ?)を飼い始めた男女が、犬の行動を見ては次々と商品をネットで注文していく。

「あぁ、あれね!」。

ご覧になったことのある方、いらっしゃるでしょ?

グレートピレニーズ

もふもふのグレートピレニーズ(画像はWikipediaより)

最後、男女二人と犬は犬を真ん中にして川の字よろしくベッドで寝る場面が映し出されますが、いかにも窮屈!!
そこで男性は初め大型犬用のベッドを注文しようとするものの、思い直してブランケットを注文します。
ベッドを犬に明け渡し、自分がソファで寝ることを選択したんですね。

人間のオジサンみたいに、犬が大鼾をかくオマケがついて、CMは終了します。

いやー、ほのぼのした雰囲気が漂っていて、いいですよね。
とりわけ人間が寝る場所を犬に譲る、という設定に大満足! です。今なら、さしずめ”ドッグファースト”といったところでしょうか。

しかし、飼い主に対して犬が遠慮する、あるいは空気を読むなんてストーリーだったら……。

たとえ「なんてお利口なワンちゃん!」という声が多いとしても、ハル婆やはちょっと嫌な気分になったと思います。
実は、同じ企業の以前のCMは、見ていて哀しい気持ちになったのです。

ゴールデンレトリーバーを飼っている男女に新しい家族=赤ちゃんが加わりましたが、なぜか赤ちゃんはゴールデンレトリーバーを見ると泣き出し、絵本でライオンを見るとニコニコです。

そこでパパは一計を案じ、ライオンのたて髪のかつら(こんな商品まで扱っているのかと正直、驚きましたけど)をネット通販で注文。

ゴールデンレトリーバーがそれをつけて姿を現すと、赤ちゃんはご機嫌で、めでたし、めでたしといった内容でした。

まだ歯も生えていないような赤ちゃんが、ゴールデンレトリーバーは駄目でライオンは怖がらないという設定自体、少し無理があるんじゃない?
とツッコミを入れたくなりますが、なによりもゴールデンレトリーバーでは泣き出す、「だったら変装させようよ」という発想に違和感を覚えました。

横並びのゴールデンレトリーバー3匹

犬も人間も、まんま受け入れられるほうがいい

少しお行儀が悪かろうが、少し不細工でかっこ悪かろうが、少しのろまだろうが、まずはまんま受け入れる。

これ、相手がペットに限らず、人間でも同じでしょ? そのまんまで受け入れられないのは切ないですよ。

あのCM、なかなか評判良かったそうですが、ハル婆やにはゴールデンレトリーバーの表情がどこか物悲しく感じられ、見るたびに心がブルーになりました。

 

桜の木の下で① かろうじて成立している命

桜をバックに

桜をバックに踏ん張ったタロー爺さんの雄姿?

獣医師から
「小型犬だと15歳の誕生日を迎える子は少なくないけれど、満16歳を迎えられる子は少なくなる」という話を聞いた翌年の春、
連れ合いは桜を背景にタロー爺さんの姿を写真に収め、スマホの待ち受け画面にしました。

獣医師の話には続きがあります。

「それだけ16歳を過ぎたら、いつ何が起きても不思議じゃないんです」

15歳と9カ月のとき、慢性腎不全を発症しながらもタロー爺さんは17歳となり、腎臓の状態を示す数値も落ち着いていたので、実を言うと、ハル婆やはすっかり慢心していたのです。

犬友と「もしかしたらタローは不死身かも……」なんて軽口を叩いていただけに、獣医師の言葉は正直、ショックでした。

今、タローがこうして生きているのは、絶妙なバランスの上にかろうじて成立しているだけで、それを維持していくことはとてつもなく難しいのだと、思い知りました。

それでも無事に満18歳前の桜の季節を迎えることができ、桜とタロー爺さんとを再び画面に収めます。

連れ合いは「これが最後かも……」とつぶやきながら、待ち受け画面を更新していました。写真の中のタロー爺さんはたった1年しか経っていないのに、ずいぶん年老いた感じです。

19歳になる前の3月、これといった前兆もなくタローが突然、体調を崩しました。
発熱して息も荒く、食事も水も受け付けません。
祈るような気持ちで毎日々々、抗生物質を注射してもらいました。

痩せこけたタロー

すっかり痩せてしまったものの、自力で立つ。桜のパワーか

1週間が経ち、ようやく危機を脱した彼を連れて、何回となくお花見をした公園に立ち寄りました。
久し振りに土の感触や草の匂いを味わってもらおうと思い、彼をカートから降ろしました。
ほとんど花は散っていましたが、タロー爺さんは四肢で土を踏みしめ、桜の木の周囲をクンクン。
思わず声をあげてしまいました。
「うわっ、歩けるじゃん!!」

風が出てきたので、タロー爺さんを抱き上げてカートへ。心の中で話しかけました。
「ずいぶん軽くなったね。1週間、食べてないもんね。帰ったら、ご飯食べようね。お腹いっぱい食べようね」。

ゆっくりゆっくりカートを押しながら、公園を後にします。

彼の丸い頭の上に、桜の花びらが舞い降りてきました。

頭上に桜の花びら

カートでうつ伏せになった頭の上には、なんと数枚の桜の花びらが

 

桜の木の下で② “花より団子”の面目躍如

主なきステージ

桜の季節が訪れても、雄姿? の主の姿はない


満開から花冷えの日が続いたおかげで、平成最後の東京の桜は、お花見の時期が長く続いています。
桜の便りが聞かれる頃になると、寒さも和らぎ、なんとなく浮き浮きした気分になりますね。

でも花粉症を患うハル婆やにとって、タローが生きていたときは恨めしくもありました。
なにしろ彼の朝夕の散歩を終えると、鼻がムズムズして くしゃみを連発し、ヒリヒリするほど鼻をかみ、ボーっとした日々を過ごすのが常でしたから。

そういえば動物も花粉症を発症するらしく、ニホンザルが目をゴシゴシこすったり、くしゃみをする映像を目にしたことがあります。

満開の桜

桜の盛りはまた、花粉症の季節でもあるのです

タロー爺さんはどうだったかなぁ。

彼がくしゃみをすると、顔がバイアスに歪んで、不細工な顔がますます不細工になると大笑いしたことは覚えているのですが、そのくしゃみは花粉症によるものだったのかどうか――。

花粉症はさておき、桜の季節になると思い出すことがあります。
彼がまだ小さい1、2歳の頃、散歩の途中によく小石を拾い食いしていました。
満腹中枢が壊れていて年中空腹感があるのか、はたまた歯が生え替わる時期でむず痒かったのか、理由はよく分かりません。

口の中から小石を取り出そうと格闘するものの、彼も歯を食いしばって抵抗します。
その頑固さに手を焼きました。

桜を食す

好物はソメイヨシノ

もう少し大きくなった3、4歳の春のことです。
ふと気がつくと、タローは地面に落ちた桜の花びらを一心不乱に口へ入れているじゃありませんか!!

待てよ……桜の花びらならいくら食べてもカロリーは低いし、飼い主の懐も痛まないよね。
小石を食べるよりずーっとマシでしょ!!
体への影響もほぼほぼないだろうと考え、好きなだけ飽きるまで食べさせました。
“花より団子”の面目躍如たる、まさにタローらしいエピソードです。

味の違いが分かるのかどうかは不明ですが、桜以外の花びらは口にせず、桜もソメイヨシノ以外、たとえば八重桜の花びらはお気に召さないのです。

あんなに食いしん坊だったのに不思議、と言えば不思議でした。 

禁断の味を知る

オヤツ欲しさに見上げる

散歩中は、オヤツ欲しさに見上げるポーズを、頻繁に繰り返しました

タローが初めて犬用のジャーキーを口にしたのは、横浜に来て間もなくのことでした。
いつも立ち寄る公園で出会ったおじいさんが、胸ポケットからジャーキーを取り出し、「はい」とくださったのです。

モグモグ、ごっくん。


このときのタローの顔が忘れられません。人間のようにしゃべることが出来たら、きっとこう言っていたと思います。

「こ、こんなに美味しいもの、初めてでしゅ!!」。


お座り姿勢のまま、タローはおじいさんに近づきました。「お口に合いましたか?」
おじいさんが再び胸ポケットに手を伸ばすと、見事にぺったらなタローの横顔から涎が滴ります。
ハル婆やの制止も構わず、タローはごっくん。ほとんど噛まずに飲み込んでいるじゃありませんか! 

まだ日の高い初夏の夕刻、おじいさんがくださったジャーキーとの出会いは、タローに至福をもたらしました。
以来、好物だったキャベツの芯をあげようとしても、彼はプイと横を向く始末。
きっと「こんなもの、食べられますか!」と言いたかったのではないかと。トホホ。 

父親がオヤツとして彼に与えていたのは、森乳サンワールド製のビスケット、蒸かしたサツマイモ、キャベツの芯の3種類だけでした。
タローの飼い方に関して、この点だけは父親に脱帽です。

オヤツを見せて「待て」

オヤツの「待て!!」のときの集中力がスゴイ(笑)

飼い主がハル婆やに替わって、ジャーキーに始まり、彼は禁断のオヤツの味を次々と知るようになります。

人間が食べる物を犬に与えると、味が濃くて癖になるからよくない。もちろん解っていましたが、ハル婆やと連れ合いは守れなかったです。
果物や焼くか蒸かしたサツマイモ、食パンの耳、どら焼きや肉まんの皮などを、自分たちが食べるとき、ついついあげてしまいました。

果物はビタミン、さつまいもは食物繊維が豊富だし、主成分が小麦粉のパンの耳や皮なら、さほどカロリーや塩分は高くないだろうと言い訳をしながら。

しかし、近年の糖質制限ダイエットを持ち出すまでもなく、限りなくエビデンス*1は薄いですよね。トホホ。

*1:証拠、根拠、証言、形跡などを意味する「evidence」に由来する外来語。「エビデンスがある」と言えば、一般的には「科学的根拠、裏付けがある」ということを意味します