パグ犬 タローが教えてくれたこと

生命の危機を何度か乗り越え、快食・快便、20歳に向け順調な日々を送っていたパグ犬タロー。それが、たった一日食べなくなって……。愛犬との日々を振り返りながら、老犬との暮らし、介護のヒントにもなればと考えています。

長生きの秘訣②適正体重編 小太りは長寿のもと 

首周りに付いた肉

三段腹? のような肉付きのいい首周り

タローはドッグフードを1日2回、365日毎日食べ、
その上でけっこうな量のオヤツも食べていました。
オヤツは主に犬用ビスケットやチーズ、ジャーキーなど。

オヤツをあげ過ぎると、食事を食べなくなると見聞きしますが、彼の場合、オヤツは別腹でした。
オヤツの量によって食事量が影響されることはなく、反対に食事量を増やしても、オヤツの催促が止むことはなかったです。

結局、オヤツのカロリーはすべてプラスオン、彼の体重に反映されました。

ネットで検索すると、成犬パグの♂の理想体重は8㎏前後前後です。彼の体長(首~尻、尻尾含まず)は45㎝以上、胴回り55㎝以上とやや大きく、体重は限りなく10㎏に近い。

抱っこすると腕や腰にズシリときます。尻部に向かってくびれは存在するものの、首の周りはエリマキトカゲのような贅肉を蓄えていました。

食事をダイエットフードに変えたりしましたが、オヤツを止めることは出来ず……。

 

若いときも老いてからも散歩大好き
若いときはもちろん老いてからも散歩は自ら進んで

主治医に相談すると、意外にも大目に見てくれました。「タロー君は骨格がしっかりしているし、筋肉もある。毎日散歩も欠かしていないようだから、まあいいですよ。でもこれ以上、増えないほうがいいかな。10㎏超えると、薬や注射の量も上のランクになるからね」

そうなんです。ワンコの薬や注射の量って、体重によって異なるんですよね。

遺体の焼却費用と同じで当然、料金も異なる。飼い主としては気がかりなところです。

では10㎏を超えないように何か努力をしたか? と尋ねられたら、狂犬病注射やワクチン接種の時期に、オヤツをあげる回数を少し減らしたぐらいでしょうか。
トホホ。

タローは人間で言えば中年太りが気になり始める7歳を過ぎていました。
ですが、ことさら食事やオヤツを制限しなくとも、体重は10㎏前後をキープ。

肥満犬は散歩をしたがらないと聞きます。けれど散歩はもとより、走ることさえ、彼は苦にしませんでした。


そんなわけで、たとえ標準体重をオーバーしていても、タローにとっての適正体重が10㎏近くなのだと納得し、やり過ごしました。

人間の誤ったダイエット信仰と同様、体重の多少にとらわれ過ぎないほうがいいみたいです。

それにほら、小太りの人のほうが長生きするというデータもありますよね!? 

長生きの秘訣③デイリーケア編 ズボラな飼い主でごめんね

困り顔のタロー

デイリーケアの習慣がなかったタローの困り顔

決して自慢できる話ではありませんが、ハル婆やはタローの歯磨きや耳掃除、爪切りなど日常的な手入れ、
これがほとんど出来ていませんでした。トホホ。


歯磨きは小さい頃から習慣化すると、歯ブラシを使っての口腔ケアが容易に行えるそうですね。
飼い主さんがきちんとケアをしているワンコの歯を見せてもらったら、歯垢がほとんどついていません。
裏側も真っ白で、まったく口が匂わない。

タローとは大違いです。

歯ブラシは苦手でも、指に巻きつけて歯垢を取り除く歯磨きシート(研磨剤入り)などを駆使して、口腔ケアをまめに実践しておけばよかったと悔まれます。
人の顔を舐めることが好きな犬だっただけに……。

麻酔をかけて歯石を取るにはギリギリの年齢と言われ、慌てて手術を受けたのは彼が13歳のとき。
歯槽膿漏から歯がグラグラして、ドッグフードが食べにくくなっていたのです。
奥歯を残してほとんどを抜歯してもらうと、再びモリモリ食べ始めたので一安心でしたが、
主治医からは「こんな歯の状態で、硬いドッグフードをよく食べていましたね」と呆れられる始末……。
トホホ。

シワシワの顔

シワシワの顔、たれ耳を清潔に保つには……

耳掃除は、気がつけば拭いてあげる程度でした。
垂れ耳の犬種は耳垢が溜まりやすいので定期的に、できれば毎日拭いてあげたほうがいいそうです。
怠けていると、すぐに茶褐色の垢がこびりつき、悪臭を放ちます。

力を入れないのが原則ですが、それだと落ちにくい場合、「ベビーオイルを垂らした柔らかい布で拭いてあげるといいですよ」と獣医師がアドバイスしてくれました。
凹凸の間も丁寧に、あくまでも優しく、です。

ただし、綿棒などを使って耳の奥まで掃除するのは、微妙な部位を傷つけてしまうリスクを伴うので、
そこは医師に任せて欲しいと言われました。
もちろん不器用なハル婆やはお願いしていました。

爪切りも、ハル婆やはほとんど実践せず。
と言うよりもタローの場合、爪切りをする必要がありませんでした。

タローの爪

散歩大好きのワンコは爪切り不要

彼がまだ横浜にいた頃です。
ホームセンターで犬用の爪切りを購入し、爪の構造を知らぬままパチンとしたところ、
血がビューっと噴き出してビックリ!
慌てて近くの動物病院へ連れて行ったら、ある程度体重があり、散歩でよく歩いている犬は、爪切りをしなくても大丈夫と言われました。
爪の伸びる暇がない、ということでしょう。

18歳を過ぎ、散歩する距離が極端に短くなったタローは、かかりつけ医で定期的に爪を切ってもらうようになり、
ハル婆やはついに爪切りを習得する機会を逸しました。

タローが我が家に来た理由① 2匹死なせた父の執念

セラピードッグの代わりに

キャバリア2匹の無念を背負って真打登場

タローはもともと、私の父親が飼い始めた犬です。
なぜ私が飼うことになったのか、その経緯をお話しようと思います。

実家の母親が認知症になり、セラピードッグ*1という言葉を小耳に挟んだこともあり、犬でも飼ったらどうかと提案したのが始まりでした。

じつはタローを飼う以前にも、父親はキャバリアという犬種の子犬を飼ったことがあります。
しかし、家に来てから1か月も経たないうちに感染症に罹り、死んでしまったのです。巨大駅のガード下にある怪しげなペットショップから購入したのが災いしたのか、あろうことか2匹続けて*2
症状から推測すると、2匹とも犬ジステンパー*3やパルボウイルス感染症*4を発症したのではないかと思います。
鼻水やくしゃみ、嘔吐などの症状が現れ、慌てて近所の動物病院に連れて行ったものの、2匹とも幼い命を救うことは出来ませんでした。

生後60日を過ぎて母犬から離すとき、子犬にワクチンをきちんと摂取*5していれば、こうした感染症罹患率はぐんと低くなるそうです。飼育環境が悪かったのか、ワクチン接種を怠ったのでしょう。

獣医師さんも「2匹続けてというのは珍しい。まずないね」と呆れていました。

ところが父親は懲りずに、今度は老舗百貨店のペット売り場を訪れ、パグ犬に目をつけたのです。たぶん、私が飼うならパグ犬がいいと主張したからではないかと……。

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犬たちの隠された生活

本の中には著者が実際に飼育し、観察を続けた『パグ』のページがあります

以前から、あのユーモラスな顔や体形はムツゴロウ(畑正憲)先生のTV番組などで見知っていましたが、偶然、本屋で手にした『犬たちの隠された生活』*6という本に登場するパグ犬に興味を抱いたのです。

愛嬌のある顔とは裏腹に、じつに誇り高い性格。もちろん、すべてのパグ犬に共通するはずありませんが、そのアンバランスなところに、すっかり魅了されてしまいました。

アンバランが魅力

愛嬌と誇りの高さを併せ持つ?!

 

*1:動物を介した治療方法「アニマルセラピー」の一種である「ドッグセラピー」を実施するために訓練された犬のこと。犬と触れ合うことで副交感神経が働いてストレスが軽減したり、ドーパミンが増えて楽しい感情が沸き起こるなどが報告されています

*2:最初の犬が丸1か月経たずに感染症を発症して死んだことを父親がペットショップに伝えると、代替品として同犬種・同年齢(生後2か月)の子犬を渡し、購入金額の返金には応じなかったとか

*3:感染力が強く、死亡率も高い感染症。主な症状はくしゃみ・鼻水、咳、発熱などで、元気や食欲がなくなり、さらに下痢や嘔吐も。重篤化すると痙攣や麻痺などの神経症状が現れます

*4:非常に感染力・死亡率が高く、恐ろしい病気。感染した犬の糞便から移るそうです。激しい下痢や血便、嘔吐などを起こす腸炎型と、突然死してしまう心筋炎型とがあります

*5:母犬のお乳には免疫が含まれていますが、その効果は生後60日程度まで。つまりペットショップに並ぶ頃には母子免疫が切れてしまい、感染症に罹りやすくなります。そのリスクから子犬を守るために、数種類のワクチン接種を行うのが普通です

*6:著者はエリザベス・M・トーマスというアメリカの人類学者。自らの飼い犬を長年観察して、犬の生態を生き生きと描いた傑作と言われています

タローが我が家に来た理由② とにかく人間(とオヤツ)大好き!!

おすわりしたタロー

子犬の頃から手のかからないワンコでした

私が気に入っている犬種ならば、再び犬を飼うことに反対しないだろうと目論んだのかもしれません。

父親に請われて一緒に売り場へ行くと、バックヤードから連れ出された子犬、すなわちタローと初めてのご対面。彼は嬉しさのあまり興奮し、じっとしていません。
大人しく抱っこされるのを拒み、父親の肩に登り、頭部に前足を置いて息を荒げています。

飼い主=父親と彼との今後の関係を物語るような光景を前に、思わず吹き出してしまいました。
すこぶる元気な犬であることは確かですが、手に負えなくなる事態が訪れるのでは? との不安もよぎりました。

最初のキャバリアの子犬が死んでから半年以上が過ぎた梅雨の晴れ間、少し大きめの洋菓子を入れるような箱に入って、タローは実家にやって来たのです。

タローという名前は、認知症の母親が呼びやすく覚えやすいという理由で、漢字ではなくカタカナ表記、しかも「タロウ」ではなく「タロー」としたのは、……はっきりしていません。

彼の顔を見ていたら、何となく音引きのほうが相応しいかなと。いい加減な飼い主です。トホホ。

散歩する子犬時代のタロー
散歩する子犬時代のタロー。オヤツで釣れる単純さがまた可愛い

飼い始めた当初はトラブルもなく、毎日よく食べ、元気に暮らしていました。

3人掛けのソファの横にケージを設置してもらい、ソファの上を移動するだけで、決して床に降りることはなかったと言います。

ことさらしつけたわけでもないのに排泄はきちんとケージの中で行い、粗相はもちろん、別の場所に仇することもなかったとか。

本格的に散歩をするようになると、家の中で排泄することは一切なくなったそうです。
食欲旺盛だし、散歩も大好きで健康そのもの。食い意地が張っているせいか、「お手」や「待て」もすぐに覚えました。小さい頃から本当に手のかからない犬だったと思います

タローが我が家に来た理由③ 棒命中事件から救出

母親に嫌われたタロー

その超個性的な風貌がアダに

タローがソファを降り、床をチョロチョロするようになった頃、事件は起きました。

母親は認知症が進んだためか、はたまたもともと犬猫が好きではなかったからか、
足元を元気よく動き回る彼が煩わしくなったのでしょう。しかも不細工な顔しているし……(面食いの母親は、たとえ犬でも不細工なパグ犬は気に入らなかったみたいです)。

彼をそこそこ太い棒で追い回し、たまたま彼の頭に棒がご命中! という不幸な出来事がついに発生してしまいました。

興奮したのでしょう。彼は激しくぐるぐると回り、なんと脱糞してしまったそうです。

これ以降、「興奮する」⇒「排泄行為」という彼の行動パターンが定着するのですが、この話はまた別の機会にしたいと思います。


幸い、それ以上の事態に陥ることはなかったのですが、この先も実家で買い続けるのは、両者にとってかなりのストレスになるだろうと感じました。

ゲージとタロー

ゲージは生涯の宿敵となり、その中には絶対に入らなくなった

また、父親の飼い方に疑問というか、不満があったのも事実です。日常的に脱ケージを許しておきながら、客人があるとケージに入れて別室へ。

タローのゲージ嫌いが決定的になったのは無理もありません。

ある日実家を訪れたとき、ケージに押し込められて散歩にも行けず、珍しく吠えまくるタローに遭遇しました。

思わず父親に「人間の都合で犬を振り回すのはよくない」と忠告したこともあります。

棒命中事件を聞いた以上、もう放っておけません。

当時、横浜に住んでいた私がタローを預かることに――。狂犬病やワクチンの注射を済ませ、満1歳を過ぎた5月下旬、彼を我が家に迎え入れました。

あくまで預かるつもりだったにもかかわらず、間もなくすると母親が施設に入所したのを契機に、父親は生後6か月を過ぎたキャバリアの子犬を再び手に入れたというじゃありませんか。

キャバリアのチャー

父親の愛したキャバリア3代目「チャー君」

このいきさつも機会がありましたら披露したいと思います。


「新しい犬を飼うのはおかしい。タローを戻すよ」というやり取りもあったのですが、父親は以前からお気に入りの犬種キャバリアのチャー君に夢中!! 

「タローはお前にやる」ですと。

ひぇー、可哀そうなタロー。

「物品扱いはやめて!! ペットはあなたの玩具ではなく生き物なんだから。そういう態度は飼い主として無責任極まりないよ」となじったものの、父親はおかまいなしです。

しかし……憤慨しつつも私自身、パグという犬種、ならびにタローの面白さにどっぷりとはまってしまい、気持ち的には手放せなくなっていたことは、まあ否定できません。トホホ。

以後18年以上の歳月を彼と一緒に暮らすことになりました。